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最停滞・最遅速・最密・最強フェリー (9月24,25&28,29日)

マラウィ湖は綺麗である。その湖はフェリーで縦断できる。
となったら、乗るべし。できれば最も南の港から北上したい。
モンキー・ベイに来た理由はこれである。
ただし、北上した後に心に残るのは、マラウィ湖の美しさではない。
フェリーの浮世離れさ、である。目の前に広がる人間の渦。
逃げること、いや、身動きもできない、アフリカというカオスだ。


船着き場までは車で。チケットを買った後、T君と再会する。
彼は僕と同じく、W杯後に北上している。久しぶりの合流だ。
彼は1つ目の寄港地チポカまで。3-4時間の船旅である。
彼も僕と同じ2等を買う。かなりきついらしいよと言われる。
1等は外国人値段であるし、2等で現地の人達と一緒にいたい。
いつもの僕の方針である。少々不安になるも、何とかなるだろう。

せっかくの再会なのに、たった4時間行動を共にするだけか。
だが、フェリーは10時を廻っても一向に出港する気配がない。
こういう時、日本人1人でないというのはタイミングがいい。
母国語で話せる相手がいることで、気持ちも落ち着く。
何時に出発するのか聞くと、係員から「アフタヌーン」との返答。
「What time ~」ではなく、「When ~」の領域の回答だ。
まだ、笑っていられる。横になって小説を開き、いつの間にか眠る。
結局出発したのは17時だ。最初から7時間の遅れ。
T君にとっては4時間の道のりが11時間になったことになる。
駆動系のトラブルらしい。それならちゃんと直してほしい。
湖の真ん中で止まったら、救助船など間違いなく来ないだろう。

出発だ。フェリーはぐるっと回って向きを変えたが加速しない。
GPSで速度を確認してびっくり。最高15km/h。平均13.2km/h。
今までで乗った中で最も遅い。波の力だけで動いている気さえする。
チポカまで4時間。この遅さは今回だけのものではないようだ。
T君を見送った後、2等の長椅子に横になる。
乗客は少ない。期待していなかった、横になっての熟睡。
椅子はクッションもあり、何処ぞの夜行列車よりも快適だ。

朝起きて周りを見渡す。昨晩は何処にも停泊しなかったみたいだ。
進行方向を眺める。陸地が見える。第2の寄港地ンコタコタらしい。
寄港地と言っても岸には着かない。皆とも桟橋もない。
沖に停泊してボートを降ろす。フェリー両脇に1艘ずつ吊っている。
このボート2艘で、人と荷物を運ぶ。ピストンで運搬するのだ。
岸には大勢の人と荷物が待っている。フェリーにも同様である。
結局、積み下ろしに4時間。朝着も、出発は昼過ぎになる。
ムタングアに着いたのは16時。ムタングアはモザンビーク領。
平均13km/hでもこのフェリーは国際線。ここでも4時間の停泊。
荷物を積み下ろすうちに暗くなる。真っ暗闇の中でも作業は続く。
2等も人がかなり増える。僕は未だ横になれるスペースをキープ。
というか、僕に気を使うマラウィ人はそこに座らず床に座るのだ。
子供4人を連れた女性が乗ってくる。僕は自分の横へ導く。
今日はうつ伏せで眠ろうとするが、なかなか眠れない。寝にくい。
それを見て母親はぐっすり眠った子ども2人を連れて床に寝る。
僕は残り2人と重なるようにして眠りに落ちる。
床も通路も、皆が寝転ぶので足の踏み場がない。トイレは諦める。
それでも誰も文句を言う人はいない。この状態に慣れているのだ。
諦めているという方が確かかもしれない。

目的地のリコマ島には夜の2時に到着。真夜中だが余り寒くない。
1つ目のボートに乗り、膝下の深さのところでボートから降りる。
短パンに着替えていたのでほぼ濡れず。荷物も無事に降ろす。
フェリーから無事生還してホッとする。

これが往路である。横になれたので辛くはなかった。
それも強烈なフェリーの様子を感じる経験ができたことが嬉しい。
ただし、北向きは南向きよりも込みが少なく楽らしい。
復路は1等に乗ることにする。それもンコタコタまでだ。
だが、油断は禁物。もう絶対にしたくない経験をすることになる。

フェリーは19時30分に到着。時刻表では午前3時30分なのに。
遅れるのはいつものことらしいから、誰も早起きをしない。
大体、15-17時に来ることが多いらしい。時刻表は廃止でいい。
リコマ島の前は、向こうに見えるチズムル島に停泊する。
フェリーがチズムルを出たのを確認し、船着き場に行けばいい。
もちろんその理由はフェリーの速度であり、荷物の積込み時間だ。

周りを見ると、幾分、他の停泊地よりも人も荷物も多い気がする。
2艘のフェリー備え付けボート以外にも島のフェリーが出ている。
僕は民間ボートに乗る。こちらはチップが必要だが値切る暇はない。
早く乗らないと他の人が乗り込んでしまうからだ。
僕はやっとのことでボートへ乗る。
膝上の水に荷物を濡らさないように気にしつつ、急がねばならない。
フェリー周りには先着ボートが溢れている。
僕らのボートは並んでいる他のボートを押し退けて乗車口へ。
並ぶという概念がない。それがカオスを膨らませるのだ。
何やらフェリー上の人が僕らのボートに怒っている。
逆側へと廻る。割り込みが酷過ぎたようである。
よく見るとこのボート、底から水が入ってきているではないか。
1人がそれをかき出している。沈む心配がなさそうでホッとする。
周りを見ると、他のボートも水をかき出している。ヤレヤレ。
逆側でも割り込む。今回も強引だ。僕は降りる順番を待つ。
その時隣のボートの人が怒って僕らのボートを蹴った。
ボートがフェリーから離れ、1人の男が湖に落ちた。
皆で引き揚げる。危なかった。僕が落ちる可能性もあったのだ。
服を着ているから重い。溺れてもおかしくない。彼の携帯は…。

なんとかフェリーに乗り込んだが、船中は人で溢れ返っている。
チケット購入は後回し。この混雑では仕方ない。
指を差される方へ。体の幅ほども通路がない。無理に体をねじる。
少し進んで気がつく。もしかして、階段は逆方向ではないか。
1等はデッキなのだ。乗客はこちら側にも階段があると言う。
他の客はこちらに階段などないと言う。頭にも混乱が生じる。
結論は、間違い。逆方向。後ろを振り返る。駄目だ。戻れない。
僕がいたのはエコノミー。最安席。身動きができない状況だ。
係員は何故こちらを指したのだ。狭さと先の見えなさで苦しい。
階段を登ればすぐに混雑から解放されたのだ。1等席の甲斐がない。
怒りも頂点に達し、係員の馬鹿さ加減を愚痴ってしまう。
そのとき1人の女の子が僕にこう言った。「ごめんね。」
エコノミーに黙って座っている彼女の言葉で、少し頭が冷える。
こちら側ではだめだ。船尾を廻って逆サイドへ進む。
逆側は…、更に酷い。最悪の状況に陥ってしまった。
前にも後ろにも行けない。皆、自分が進むことしか考えていない。
通路の荷物の量はこちら側の方が多い。前から乗り込む人が迫る。
僕はそれを逆らって進まねばならない。1人分のスペースもない。
手に65Lのバックパックも30Lのサブバッグもある。
途方に暮れるとはこういうことだ。どうしようもない。
そんな時、1人の男が手伝ってくれるという。彼は通路の荷物の上。
彼に大バッグを渡し、僕はサブバックを持って流れに飛び込む。
人に構ってなんかいられない。考えるのは自分が進むことだけだ。
周りに気を使いなんかしたら、船を降りるまでこのままだ。

なぜ並ばない。大変になるだけだし、時間もかかる。
せめて一方通行にすべきである。そうすれば人は流れるだろう。
積む荷と降ろす荷も、一方向に流せばいいではないか。
整然と考えてやればもっとうまくいくのに、やらない。
パワーで押し切ろうとする。効率よくやることを考えない。
それが自分のことしか考えられない状況を生む。悪循環である。
そもそも、桟橋がないのがおかしい。作るお金がないらしい。
こういうものを良くするために援助はあるのではないか?
1度このフェリーに乗れば、上の人も何とかしようとするはずだ。

なんとか階段の裏まで来る。乗船口であり、一番のカオスだ。
目の前で1人の女の子が暴れている。
男達が取り押さえようとしている。余裕が出た僕もそれを手伝う。
その時、下から顎を、硬く大きなモノで突き上げられる。
硬いモノとはもう1人の女の子の頭だ。2人は喧嘩しているのだ。
こんなところで止めろと言いたいが、喧嘩も仕方ない状況だ。
仲裁の脇を、いや、人々の肩を踏みつけ、階段に手を掛ける。
上から大バッグを受け取り、やっと一息つくことができた。

1等は前述のようにただのデッキだ。板の上に自分のマットを敷く。
暫く、横になる。体中がだるい。頭の中も同様だ。
あの中を抜けて来れたことがウソのようだ。何とかなるものだ。
階下を眺めると、状況は好転しているわけもない。
マラウィ人に聞くと、出港は明朝5時以降だろうと言う。
約10時間の停泊か。往路でも最高5時間だったのに。
この状態があと10時間くらい続いたら死人が出るのではないか?
何人かは気が狂うのではないか?
いつのまにか寝ていた。約1時間。まだ荷物の積み下ろしが続く。
ちょっと階下を見てみたいが、あそこに飛び込む気にはなれない。
今回1等にしたのは大正解だった、と思う。

真夜中に目を覚ます。2時。
暗闇の中を当たり前のようにボートが行き来する。
疲れは回復したけれど、やはりもう一度見に行くことは憚られる。
他の停泊地より積み込む荷物が多い。ほとんどが魚を干したもの。
リコマ島ではほとんど作物が取れない。魚だけが収入源だ。
小魚を売りに本土へ向かう島民たち。1等に乗れるはずもない。
デッキは広々している。商売人と外国人しか乗れないからだ。
まさに天国と地獄。申し訳ないが、あれは地獄でしかない。

朝5時30分に目を覚ますとフェリーは動き出している。
まだすぐそこに島が見えるから、出港して間もないのだろう。
10時間かかったらしい。桟橋があったら大幅に短縮するだろうに。
南行きは次の停泊地ンコタコタまで直通だから、11時間で着く。
けれど、僕からしてみれば21時間の道のりとなるのだ。

今日は船が揺れる。真っ直ぐ歩けないくらいの揺れだ。
風が強く、波が高い。海のようだ。湖もこれだけ揺れるのか。
やることがないので小説を開くが、さすがに酔ってくる。
座っていることもできず、寝ころんで音楽を聴く。

ンコタコタが見える。明るいうちに上陸できそうだ。
フェリーが止まりそうなので乗降口へ。人で溢れ返っている。
失敗した。まだ降りるのは早すぎた。揉みくちゃになったのだ。
記憶が甦る。列を無視し荷物の上を歩いていく男を殴りたくなる。
殴らないまでも日本語で怒鳴ってしまう。改善されるわけもない。
なんとか1番ボートに乗り込んだ。やっと本土に帰れる。
ボートを降りるところは何故かリコマ島より水深がある。
膝上である。股下である。他のボートに乗り換える人もいる。
最後は頑張ろう。手伝ってもらい、水の中へ。
この水深で濡れないズボンはギャルのホットパンツだけだろう。
転ばないように慎重に歩く。何とかバッグは濡れずに済んだ。
砂浜に到着。安堵、安堵、安堵。
島は素晴らしいが、もう一度あのフェリーに乗る気にはなれない。
自転車タクシーに乗って町へ。風が気持ちいい。
今僕を包むのは、吹き抜ける風である。人ではない。
それだけで嬉しい。

旅では、その土地の生活を知ることが目的の1つである。
できれば体験したい。だから現地語を使い、同じ物を食べる。
けれど、このフェリーの現地民スペースだけは…。
終わった今はいい経験と思えるけど、もう絶対に嫌だ。
彼らはこの状況が普通なのだ。慣れてしまっている。
感覚には大きな隔たりがある。理解は難しい。消化できない。

マラウィ湖縦断フェリーは、アフリカ独特のカオスの象徴である。
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