今回も朝は早い。4時30分起床。テントをたたんで、出発準備。
ハボロネ発ジョバーグ行きのバスは6時30分発の1本だけ。
早朝は市バスがなくタクシーを呼んだが、約束の時間に来ない。
高地の冬の朝はかなり寒い。寒さがイライラを増長する。
タクシーがやってきたのは30分遅れ。悪びれた感じはない。
ガツンと怒ってタクシーを飛ばさせる。なんとか間に合った。
バスは南アとの国境に向かう。ハボロネからは30分で着く距離。
無事にボツワナを出国。歩いて南アのイミグレへ。
先に行った人達が並んでいる。そのうち皆、建物の外へ出てくる。
イミグレ職員によるストの交渉が始まったらしい。
彼らは勿論公務員であるから、相手は政府らしい。なんとまあ。。。
1時間後、職員が荷物を持って帰っていく。僕らにはお構いなし。
交渉が決裂したらしい。ということは、今日は南ア入国不可か?
とはいえ、もうボツワナ出国手続きは済んでしまっている。
今僕はどこの国にもいない人間である。ボツワナにも帰れるのか。
バスの乗務員はこのままもうちょっと待つという。
2時間後、イミグレが開いた。女性が1人、全員分を処理し始める。
なんとかなるようだ。そうしているうちに外が騒がしくなる。
先程出ていった職員達が戻ってきた。でも仕事をする気配はない。
皆で歌い踊っているのだ。お気楽なもんだ。まあ、いいか。
写真を撮ろうとすると、さすがに警備員に止められる。
そうこうしているうちに3時間以上が経過している。
当初、このバスは13時到着予定だったが、どうなるのか。
ジョバーグ宿泊は避けたい。安宿までのタクシー代は高い。
夜のジョバーグ中心街には居たくない。ココは世界一危ない町だ。
到着したのは16時。きっちり3時間遅れである。
スワジランドのムババネまで行ってしまいたい。ミニバス乗り場へ。
ミニバス乗り場はバスターミナルのほぼ構内にある。
ただ、案内して安くない金を請求するヤツらがたむろしている。
最初に払わないとはっきり言っただろう、と言っても付き纏う。
じゃあこれでどうだと余っていて使えないナミビア・ドルを渡す。
しぶしぶ受取る彼ら。南ア・ランドと等価でもこの国では使えない。
僕のあげた額は両替手数料にもならないが、これで我慢しなさい。
人が集まり、ミニバスは出発する。ジョバーグ中心街を出る。
東へひた走るミニバス。ボロいと思っていたが、130km/hで走る。
暗くなっていく。黒人ばかりだからバス内の人の顔も見えない。
僕の隣のおばちゃんはスワジランド人。彼らの言葉を教わる。
といっても、3語だけ。“Hello”と“Thank you”と“Good-bye”。
それぞれ、サウボーナ、ンニャーボーグァ、サラガーシェ、だ。
スワジ国境。おばちゃんに着いて出入国手続きを行う。
国境の兄ちゃんはやたら明るい。凄い込み具合でやっと出る。
なかなか皆が揃わない。いつもやってる入国スタンプチェック。
何処にも押されてない。何回見てもスタンプが見つからない。
混んでいるイミグレを逆走。さっきの兄ちゃんの窓口へ。
「スタンプ、押してないぞ」と告げる。うまく話が通じない。
「あるじゃないか」「これは南アの出国スタンプだ、スワジのは?」
結局は彼の押し忘れである。どうしてメインの仕事を忘れるのか。
日本人だから現地人とは違うと念を押したのに。危ない、危ない。
出発も大幅に遅れる。この国境越えに1.5時間は異例らしい。
これが今日2度目の国境通過である。
スワジランドの首都・ムババネ到着は22時。道端で降ろされる。
全くココがどこか、わからない。セントロらしいのだが……。
安宿へは歩くのが難しい。少々遠く、夜のムババネは治安が悪い。
その安宿を知らないタクシーが多い。住所を見せても乗車拒否。
1台だけ知っているタクシーがいたが、ここぞとばかりにボる。
おばちゃんは「パトカーで送ってもらったら」と言う。
中東では夕方によく使った手段だが、久しぶりは緊張する。
他の客がパトカーを止めた。「こいつ、送ってやってくれ。」
パトカーに乗り込む。さっき覚えたスワジ語で礼をいう。
和やかな雰囲気になり、最も安全な乗り物で宿へ向かう。
街中を走っているとき、パトカーを見て2人の男が逃げた。
警官の顔が険しくなり、何やら作戦を練っているような話し声。
スピードを上げて追跡。凄いスピードで急にハンドルを切る。
運転手以外が降りる。「僕はどうすれば?」 「そのままでいいよ。」
挟みうちで彼らを確保。うまいもんだと感心していた、その時。
運転していた警官が、ガツンと男2人の顔を何発も殴りつけた。
そこまでやるか。警官の顔に先程のにこやかさは何処にもない。
意気消沈した彼らは後部座席に押し込まれる。もちろん僕もいる。
後部座席には警官と僕、真ん中に男2人。スシ詰めである。
捕まった彼らと僕はくっつき、彼らの顔は僕のすぐ目の前にある。
鼻血と涙が溢れ、ちょっと虚ろな目をしているではないか。
「大丈夫」と聞く。「……」 そりゃ大丈夫じゃないよね…。
一度警察署へ行って彼らを降ろした後、僕を宿まで送ってくれる。
宿の女の子が眠そうに僕を部屋へ。かなり寒いからテントはヤメ。
疲れている日くらいはベッドで。今日はいろいろあったな、と。
ただの移動日のだったはずだが…。
翌日、モザンビークビザを取りに大使館へ。
ムババネに2泊する理由の1つはコレ。国境より安く取れるのだ。
スワジ語であいさつしてビザの申請をする。早口で何か言う。
あいさつはできてもスワジ語はわからないという。次はポル語。
モザンビークの公用語はポルトガル語。これも勿論わからない。
かといって、英語もよくわからない。何だって?と聞き直す。
「君にビザは発給できない。国境で取れ。」と言っているようだ。
そんなはずはない。取れるはず。何人かの日本人から聞いている。
理由はスワジランドの就労ビザがないことと昨日入国したこと。
それは他の日本人も同じではないか? 特に2つ目は理由にならん。
30分くらいネバったが結局だめ。おいおい、またトラブルか。
ビザの発給状況はすぐに変わる。係員にもよるのも知っている。
今回の申請、実は僕にとって、初めて海外で行うビザ取りだった。
その最初がコケた。いやはや、この頃僕には運がない。
それにしても、早朝タクシーの遅れはナミビアに続く2回連続。
バスへの駆け込み乗車、南ア国境のイミグレ職員によるスト、
スワジランド国境での入国スタンプ押し忘れ、
パトカー乗車と犯人追跡、モザンビークビザの配布拒否。
ここまで続けば何かあると考えてしまう。
とはいえ、すべて何とかなったから、いいとしよう。
不運といっても、過ぎてしまえば1つの旅の思い出となるのだ。
考えても変わらない不運は忘れて、ただ前に進むのみだ。
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